安西 慶三様
JADEC(公益社団法人日本糖尿病協会) 業務執行理事
JADEC DiaMAT推進委員会 委員長
医学博士
伊万里有田共立病院糖尿病内分泌代謝センター長
所属:国際医療福祉大学特任教授
佐賀大学名誉教授
西田 健郎様
JADEC DiaMAT推進委員会 委員
医学博士
熊本大学医学部臨床教授
JADEC(公益社団法人日本糖尿病協会、以下JADEC)では、「災害時糖尿病医療支援チーム」として、災害時における糖尿病患者の状況把握と情報提供を目的に、LINE公式アカウントとLinyを導入しました。さらにLinyのカスタマイズ開発を行い、ユーザーがLINE上で現在地を送信すると、近隣の医療機関や薬局の情報が自動で返信される仕組みを構築しています。
今回は、システムの企画と推進をご担当された安西様と西田様に、導入の背景やシステムの仕組みについてお話を伺いました。
Liny導入の効果
JADECは、糖尿病を克服し、国民の健康増進に寄与することを目的にさまざまな活動を行っています。
今回LINEを活用しているのは、「災害時糖尿病医療支援チーム」(DiaMAT、以下DiaMAT)です。JADEC(日本糖尿病協会)と日本糖尿病学会が共同で発足したチームで、災害が起きる前の防災教育から発災時の支援まで、トータルに糖尿病患者さんを災害から守る仕組みを整えています。
私はDiaMATの推進委員会の委員長をしており、西田先生は委員をされています。
2011年の東日本大震災の経験を契機として、災害時における糖尿病医療支援の必要性が強く認識され、DiaMATの構想が提唱されました。その後、2016年の熊本地震において、熊本糖尿病支援チーム(K-DAT)として活動し、2024年の能登半島地震からDiaMATは実際の医療支援チームとして活動を開始しました。糖尿病患者の中には、インスリン依存状態にあり、生命維持のためにインスリン治療が必須である方が存在します。
そのような中で、西田先生から「アメリカでは、災害時に薬局が地図上にマッピングされ、どこで薬を受け取れるかわかる仕組みがある。日本でも同様の取り組みができないか」と提案をいただきました。
私は熊本地震の際、糖尿病の医療支援チームの一員として活動していましたが、災害時には電話がなかなか繋がりません。情報をどうやって患者さんに伝えたらいいのか、本当に苦労したという背景があり、安西先生にその様な提案をしました。
その後、さまざまな調査を進める中で、「参加者のプライバシーを守りつつ、双方向のコミュニケーションができるツール」を検討しました。多くの人が普段から使い慣れているという点も含め、LINE公式アカウントであれば比較的抵抗なく利用していただけるだろうと考え、導入を決めました。
JADECからLINEヤフー社に、私たちが実現したい仕組みについて相談したところ、いくつかサービスをご紹介いただきました。その中の一つがLinyでした。
最初はJADECでLINE公式アカウントを作成し、その下に都道府県ごとのアカウントを作る形を考えていたんです。そうすることで、地域ごとの情報発信ができると思ったのですが、なかなか難しいことがわかりました。
まず、1つは県支部ごとにITのリテラシーの差があり、運用が困難な地域が出てきたことです。また、都道府県ごとに、医療スタッフ向け、インスリン依存状態の患者さん向け、その他の糖尿病患者さん向けと、3つのアカウントを作る必要があり、全体では約150ものアカウントが必要になります。これを管理していくのは現実的ではないと感じていたところ、Linyをご紹介いただきました。
私たちが当初から思い描いていた「災害時に患者さんの情報把握と適切な情報提供を行い、インスリンを安心して供給できる仕組み」が実現できるかどうかでした。Linyはそのイメージを具体的な形にして提案してくださり、これなら実現できると考え導入を決めました。
まず友だち登録の段階で、患者さんなのか医療従事者なのかを判別できるように「流入経路分析機能」を使っています。この機能で複数のQRコードを発行し、QRコードが読み込まれると、設定したタグが自動で付くようにしています。
運用は「平時」と「災害時」に分かれています。患者さん向けの運用でお話しすると、平時には名前や住所、かかりつけ医療機関、糖尿病の型、使用しているインスリン製剤および器材といった情報を、回答フォームを使って登録いただいています。
災害時には、LINEのリッチメニューを災害用の表示に切り替えるようにしています。そこで、インスリンを持ち出せなかった方に対して2つの方法で情報提供を行っています。
まず、ご自身で医療機関や薬局に薬を受け取りに行ける方には、位置情報を送っていただき、その位置情報をもとに半径10キロ以内の病院や診療所、調剤薬局を、距離の近い順に自動で返信する仕組みを構築しました。
一方、ご自身で薬を取りに行くことが難しい方には、回答フォームでインスリンの種類や必要な消耗品などを入力していただき、スタッフが個別にチャットで対応する形を取っています。
実は、この形に至るまでには色々と調整が必要でした。まだ実際の災害時に使ったことはありませんが、これまでに2024年と2025年の2度、災害訓練を行っています。1回目の訓練の時点では、今のような仕組みはまだできていませんでした。
1回目は、患者さんに回答フォームで情報を送信してもらい、送られてきた情報をスタッフが確認し、1件ずつ手作業で返信していました。約80名の参加に対し、7名のスタッフで対応していたのですが、実際の災害時に同じ対応ができるのか、スタッフを確保できるのかという懸念が生まれました。
そこで、Linyの担当者に「返信作業を自動化できないか」と相談し、要件を擦り合わせながら、患者さんの位置情報をもとに最寄りの医療機関や薬局を自動返信する仕組みを開発していただきました。2回目の訓練は、この仕組みが整った状態で臨みました。
2回は約800人の参加があり、1回目の10倍ほどの規模になりました。すべてを自動化しているわけではありませんが、多くの部分を自動返信で対応できたため、全体としてはとてもスムーズに運用できました。もし1回目と同じ仕組みのままだったら、対応しきれていたかはわかりません。
大規模災害が起きたとき、人が関わる工程が多いほど混乱が生じやすくなります。そこを自動化することで、必要な情報をシンプルに、正確に、そして素早く届けられるようになりました。
1回目の訓練では、多くの方に対応に入ってもらいましたが、2回目は私と西田先生のほぼ2人で運用できたという点も、大きな進化だと感じています。
2回目の災害訓練後のアンケートでは、患者さんから肯定的な声を多くいただきました。全体としても、評価は5点満点中4点と高く、「このような仕組みがあれば安心につながる」というご意見もたくさん寄せられました。
元々想定していたことではありますが、患者さんは「災害時にインスリンが手に入るのか」という不安を抱えていたことが明らかになりました。今回のシステムは、その不安を少しでも解消するためのものですし、災害時に患者さんが安心して行動できるようにするという視点は、とても重要だと感じています。
その一方で、改善すべき点も見えてきました。インスリンにはさまざまな種類があり、患者さんにご自身で使っているものを選んでいただくのですが、文字情報だけでは選びづらいことがわかりました。今後は画像を添えて選択できるようにしたほうが、よりスムーズで正確になるだろうと思っています。
患者さんの視点に立って、より適切な情報設計を行うことが大切だと改めて感じました。年1回の災害訓練だけで終わりにするのではなく、繰り返し実施して改善を重ねていくことが必要です。その活動自体が、災害時に患者さんが安心して落ち着いて行動できるよう支援する、啓発活動の一つになると考えています。
今後は、災害時だけでなく平時にもLINEで情報を発信していきたいと考えています。普段から情報が届けられていれば、患者さんも「こうした仕組みがある」ということを忘れずにすむのではないかと思います。
例えば、皆さんが生活している地域ごとの糖尿病に関する情報を配信することで、より親しみを感じていただけるのではないかと期待していますし、今後はそういった運用も必要になってくるだろうと考えています。
現時点では、患者の近隣の医療機関・調剤薬局を表示する仕組みとなっておりますが、薬剤の在庫状況については、個別に確認を要する状況です。今後は、薬剤の在庫状況が把握できるような仕組みの構築を目指すことも、一つの方向性として検討していきたいと考えています。
また、災害時の休薬危険薬剤はインスリン製剤に限られるものではないことから、将来的には、他の休薬危険薬剤についても同様の仕組みを応用・展開できる可能性があると考えています。
※本事例は2026年2月時点での情報です。
※インタビューの内容は、インタビュー当時のLiny及びLINE公式アカウントで提供されている機能に基づいています。
法人名:JADEC(公益社団法人日本糖尿病協会)
事業内容:ダイアベティス(糖尿病)に関する情報配信や治療・予防など重要な役割を果たす団体として、普及活動から国際交流まで幅広い活動を展開
公式サイト:https://www.nittokyo.or.jp/
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