ファネル分析は、マーケティングや業務プロセスの改善に使われる分析手法です。目標へ到達するための道のりをいくつかのフェーズに分け、フェーズ間の達成数や離脱率を測定することで、目標到達を阻害している箇所を明らかにし、改善策を検討する際に活用されます。
この記事では、ファネル分析の詳しい説明から、実際にファネル分析をするための方法、活用事例、ファネル分析をするためのおすすめツールをご紹介します。
ファネル分析とは?
ファネルとは、英語で「漏斗(ろうと)」を意味する言葉で、主にマーケティング分野で用いられます。逆三角形の漏斗のように、目的に至るまでのプロセスを経ることで、徐々にボリュームが少なくなっていく様子を表します。
ファネル分析とは、目標に至るまでの各フェーズのユーザー数や率を可視化することで、ボトルネックになっているフェーズを明らかにし、離脱を抑えるための施策検討などに用いられる分析手法です。
ファネル分析の種類
ファネル分析には大きく分けて3つの種類があると言われています。
- パーチェスファネル
- インフルエンスファネル
- ダブルファネル
順番にご紹介します。
1. パーチェスファネル
パーチェスとは、英語で「購入」を意味する言葉です。ユーザーが商品やサービスを購入するまでのプロセスをファネルにしたものがパーチェスファネルです。一般的にファネル分析というと、このファネルを指すことが多いでしょう。
パーチェスファネルでは、自社の購買プロセスに合うように、目標とそれに至るプロセスを設定します。「購入」を目標としたものだけでなく、採用活動など、様々な業務における目標を設定することもあります。
例えば、ECサイトを運営している場合、例として以下のようなプロセスを設定することができます。
- 特集ページを閲覧する
- 商品の詳細ページを見る
- 購入する
ファネルにすることで、ユーザーが商品を購入するまでの筋道を想定し、そこに至るまでのプロセスの中でどこが離脱ポイントなのかを明らかにします。
パーチェスファネルでは、一般的に「人数」が計測の指標になります。
2. インフルエンスファネル
次はインフルエンスファネルです。インフルエンスとは英語で「影響」を表す言葉です。
昨今、SNSなどの利用により、口コミやシェアなどを行うユーザーが増えており、顧客が影響力を持つインフルエンサーとして行動するようになりました。
それにより、ユーザーが商品やサービスを購入した後、他の人に与える影響力をファネルにしたインフルエンスファネルが登場しました。
インフルエンスファネルは三角形で表され、以下のようなステップが想定されます。
- 継続購入する
- 紹介する
- 発信する
各ステップで具体的に計測する内容は、各社で独自に設定することになりますが、例えば「紹介する」では、身近な知人に話すことや、コミュニティ内に有益な情報を提供するなどが考えられます。「発信する」では、より大勢の人が目にするSNSやメディアなどを通じての発信や、その発信がシェアされて拡大していくようなイメージを持たれると良いでしょう。
インフルエンスファネルでは、計測指標を「メディアの露出度」にする場合もあれば、「売上金額」にすることもあり、何の値をどのように計測するのかの検討も重要です。
3. ダブルファネル
ダブルファネルはパーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたファネルです。
見込み顧客が商品やサービスを購入し、その後、情報発信をして見込み顧客の創造に貢献してくれるような状態を目指す場合に、活用することができます。
パーチェスファネルとインフルエンスファネルを続けて分析することで、現実のユーザー行動に根ざした分析が容易になります。
ファネル分析のメリット
ファネル分析(主にパーチェスファネル)には大きく2つのメリットがあります。
1. 目標到達プロセスの課題点を発見できる
ファネル分析を用いれば、マーケティングや業務プロセスにおける課題点を明らかにすることが容易です。
目標達成までのプロセスをフェーズに分け、フェーズ間の遷移をデータ化することで、離脱率が高い箇所が定量的にわかります。
2. 効率的にCVRを高める改善策を打ち立てられる
CVRとはConversion Rate(コンバージョンレート)の略で、目標を達成した割合を表します。課題点がわかれば、改善策を検討することが効率的に行え、目標達成の割合であるCVRを高めていくことができます。
例えば、ファネル分析をしたところ、以下のようなデータが出たとします。
フェーズ | 到達人数(人) | 離脱率(%) |
商品ページ閲覧 | 100 | - |
購入フォーム閲覧 | 70 | 30 |
購入 | 7 | 90 |
「購入フォーム」にまで70人到達した後、実際の購入に至った人は7人となり、離脱率は90%になっています。この場合、購入フォームから購入までの遷移に課題があると考え、適切に改善策を検討していくことで、離脱率を下げて購入者の割合を増やすことに繋げられます。
このように、ファネル分析によって、ボトルネックになっているフェーズを見つけ、改善を重ねていくことで、各フェーズの離脱率を低下させることができ、目標地点への到達率を高めます。
ファネル分析をする方法
実際にファネル分析を行うための方法をご説明していきます。
ファネル分析は3つのステップで行います。
- 目標地点を決める
- プロセスを設定する
- 計測する
まず1つ目は、「目標地点を決める」ことです。例えば、マーケティング部であれば「申し込み」、営業部であれば「契約締結」が目標地点になるかもしれません。このように、目標地点をどこにするかを明確にします。
2つ目は、「プロセスの設定」です。目標に到達するために、ユーザーはどのようなプロセスを辿るのかを設定していきます。例えば営業部であれば、「お問い合わせリスト」→「インサイドセールス」→「商談設定」→「提案」→「契約締結」というプロセスを設定するかもしれません。このように、ユーザーが目標達成に至るまでのプロセスを適切に設定していきます。
3つ目は、「計測」です。プロセスを設定したら、そこに至ったユーザー数と到達率(離脱率)を計測します。計測をする前に、何の値を計測するのか、計測にはどのツールを利用するのかを検討する必要があります。
そうすることで、各フェーズにおけるデータが可視化でき、ファネル分析が可能になります。
ファネル分析の注意点「ファネル分析はもう古い?」
ファネル分析は、目標達成までのステップを設定し、それを順番に辿ることで、離脱ポイントが明らかになるとお伝えしました。つまり、目標達成までの道筋は1本道で直線的であることを前提としています。
そのため、多様な道を通って購買などに至るケースでは、ファネル分析が活用しづらいという注意点があります。
昨今、企業は複数のメディアを活用しながら不特定多数の人に、様々な方法で情報を配信する方法をとっています。そのため、特にBtoCの業界では、ユーザーの購買に至るプロセスを1本に定めることが難しく「ファネル分析は古い」と言われることもあります。
一方で、以下のようなシーンでは、ファネル分析は有効な分析手法です。
- 目標に至るまでのプロセスが、ある程度定まっている場合(例:BtoBの営業プロセス、採用活動)
- 特定のセグメントや施策による成果を限定的に分析する場合(例:特定のイベントやマーケティング施策を実施して、それによる購買効果を計測する場合)
つまり、直線的なプロセスを経て目標に至るケースにおいては、ファネル分析をするメリットがあります。
ファネル分析の活用事例
ここからは、ファネル分析の中でも、一般的に活用されているパーチェスファネルの活用事例をご紹介します。フェーズ設定や活用シーンの参考にしてください。
営業の業務プロセスを分析する
BtoBにおける営業プロセスのフェーズ例は以下です。
- 営業リスト
- 架電/インサイドセールス
- 商談化
- 提案
- 受注
このプロセスにおいて、フェーズの到達率が悪い(離脱率が高い)箇所を特定し、改善に取り組んでいきます。
ECサイトのユーザー行動を分析する
ECサイトのユーザー行動のフェーズ例です。セールイベントを行なった場合のユーザー行動を例としたプロセスになります。
- セールイベントページ閲覧
- セール商品詳細ページ閲覧
- 会員登録/ログインページ到達
- セール商品購入
このように、セールイベントにおける目標到達プロセスを設定し、フェーズ間の到達率を可視化することが可能です。
採用の歩留まりを分析する
採用活動は、直線的に進んでいくことが多く、各フェーズにおける歩留まりを解消することで、採用活動をスムーズに進めることができます。採用活動におけるプロセスの設定例は以下です。
- 書類選考
- 1次面接
- 2次面接
- 最終面接
- 内定
- 入社意思獲得
歩留まりが多ければ、通過した人数が少ないと言えます。
歩留まりが多い理由としては、「選考基準が厳しい」「社内の判断が遅くて他社に決まってしまった」「選考に通過したものの、候補者側の選考に進む意思が得られなかった」などが考えられます。などが考えられます。
特にどこに歩留まりが発生しているのかを見極めることで、改善点を検討しやすくなります。
マーケティングオートメーション(MA)のプロセスを分析する
マーケティングオートメーション(MA)とは、マーケティングにおいて、施策を自動化することです。
例えば、セミナー参加者に対して、メッセージを毎日1通ずつ自動送付し、1週間後に商品の案内を行なって、商品購入につなげるという施策が挙げられます。
- セミナー参加
- メッセージ1通目
- メッセージ2通目
- メッセージ3通目
- メッセージ4通目
- メッセージ5通目
- 商品の案内
- 商品購入
この場合、どのメッセージにおいて、ユーザーが離脱したのかを分析し、より良いメッセージに作り替えるなどの改善を図ることが可能です。
ファネル分析におすすめのツール
ファネル分析をする際には、ツールを用いてデータを計測する必要が出てくるでしょう。ここでは、ファネル分析におすすめのツールを2つご紹介します。
Google Analytics(GA4)
Google Analyticsは、Google社が提供しているWebサイトのアクセス解析ツールです。
自社のWebサイトに訪問したユーザー行動を計測することができます。
例えば、ページ毎にアクセスしたユーザーが、どのような行動を行なったのかを測ることができ、コンバージョンに寄与したページ、コンバージョンが低いページ、離脱率が高いページなどを調べることができます。
MAツール /CRMツール
MA(Marketing Automation、マーケティングオートメーション)ツールとは、マーケティング施策を自動化し、管理するためのツールです。見込み客の情報を収集し、それに適したアプローチを自動化することで、購入や申し込みを最適化するために用いられます。
CRM(Customer Relationship Management、カスタマーリレーションシップマネージメント、顧客管理)ツールとは、顧客情報を管理して、顧客の属性に合わせた適切なアプローチを可能にするツールです。長期的な関係を構築するために用いられます。
MAツールとCRMツールは、アプローチ対象が「見込み客」なのか、「既存顧客」なのかによって異なります。これらのツールは、ファネル分析を行うための計測に活用できます。
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